映画『侍タイムスリッパ-』

映画『侍タイムスリッパ-』
監督・脚本・撮影・照明・編集・他   安田淳一

 

映画好きのいろんな人から、「面白いから見て」と言われた。かつ、前に何かの映画を観に行ったときに、予告編を見て、面白そうだな、、、って思っていた。自宅近くには3つのシネコンがあるけれど、上映していたのは、一つだけ。もともと、自主映画で作成され、たった一つの上映館から、徐々に口コミで広がったという名作!と言っていい。
とうとう、観てきた!

 

HP掲載のストーリーをそのまま紹介する。
”時は幕末、京の夜。
会津藩士高坂新左衛門は暗闇に身を潜めていた。
長州藩士を討て」と家老じきじきの密命である。
名乗り合い両者が刃を交えた刹那、落雷が轟いた。
やがて眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。
新左衛門は行く先々で騒ぎを起こしながら、
守ろうとした江戸幕府がとうの昔に滅んだと知り愕然となる。
一度は死を覚悟したものの心優しい人々に助けられ
少しずつ元気を取り戻していく。
やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と刀を握り締め、
新左衛門は磨き上げた剣の腕だけを頼りに「斬られ役」として生きていくため撮影所の門を叩くのであった。”

www.samutai.net

 

主役の高坂新左衛門役/は、山口馬木也さん。見たことあるような、ないような、、、、時代劇によく出ているらしい。「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」に鬼平の親友左馬之助役を演じたのだとか。

高坂が討とうとした長州藩士が、風見恭一郎。演じるのは、冨家ノリマサさん。かれも、みたことあるような、ないような、、、。

多くの役者さんは、私にはよく知らない人、、だったけれど、ヒロイン役?といっていいのか、現代にタイムスリップしてしまった高坂を助けるのが、映画監督を目指す若い女性、山本優子。演じるのは、沙倉ゆうの。なんか、ちょっと、漫画チックなキャラだけど、素朴で可愛い女優さんだった。

 

感想。
面白かった!
お話的には、侍が現代にタイムスリップしてしまうというある意味鉄板のコメディ。だけど、面白かったぁ。


自主映画だからだろうか、上映開始時間になると、他の映画の予告編なく、いきなり本編。2時間を超す136分。若干、中だるみ感が無きにしも非ずだけれど、悪くない。きっと、つたえたいことがたくさんあったんだろう。涙あり、笑いあり。思わず大きな声で笑ってしまって、あわててハンカチで口を押えてしまった。そのハンカチは、次には涙をふくのに役立った。なんのシーンに泣いたかもう覚えていないけれど、、思わず、高坂と一緒に泣いてしまった。。。

 

物語は、上記の通りだが、現代に来てしまった運命を受け入れて、切られ役として頑張ろうとする高坂がいい。テレビの時代劇を見て感激して父と娘の愛に涙したり、厄介になっているお寺の奥さんにショートケーキをお茶菓子にだされて、こんなに上等なものを誰もが食べられるなんて、「ひのもとは善き国になったのですなぁ、、」と感動したり・・・。

 

以下、ネタバレあり。


高坂は、切られ役になるために殺陣を学ぶのだが、あまりに迫真の演技、見事な切られっぷりに、時代劇復活をかけた作品に準主役として大抜擢される。その作品の主役こそが、本映画の冒頭で切ろうとしていた長州藩士だったのだ。

つまり、江戸時代からタイムスリップしたのは、高坂だけではなかった。ただ、それぞれがちょっと時代がずれてタイムスリップしていて、長州藩士はすでに、タイムスリップから30年が経っていて時代劇役者の大御所になっていた。

そして、高坂は、時代劇の台本で明治維新後の会津藩士や会津の人々の無残な最期を知ってしまい、やはり長州藩士を討つべきだ、、、、と思う。

で、時代劇の撮影の最後の山場の撮影。高坂は「真剣」を使いたいと監督らに申し出る。元侍の長州藩士・風見も高坂の思いを受け入れ、「真剣」での撮影に同意する。危険だから絶対に許可できないといいはる優子ちゃんだったが、「責任は自分たちがおう」と血判までおされて、、、、。

 

最後の、二人の侍の殺陣が素晴らしい。

音響効果も、素晴らしい。

いやぁ、自主製作映画、やってくれますな!!!

 

話の展開としては、まぁ、なるほど、だし、驚きはないとしても、最後の演技はほんとに固唾をのんで、、、映画館のなかも、しーーーーん、、、、、。

いやぁ、、面白かった。

 

サムライ言葉が抜けない高坂。優子ちゃんにだんだんと惹かれていく高坂。伸びてきた髪を切れと薦められて現代風の髪型にジーパンをはくようになる高坂。

高坂に出会った人々は、高坂が江戸時代からやってきた侍だとは思っていない。時代劇の役者として、その役作りにどっぷりハマった真面目な人、としてとらえている。見た目は、どんどん普通の現代人っぽくなっていくのだけれど、。、

それでも、なんとも、、、侍っぽい所作が、素晴らしい。

いやぁ、、、時代劇にたくさん出ているだけのことはある、って感じ。

改めて、殺陣ってすごいな、、、て思う。やってみたい。。。

 

これは、見て、損しない。
たしかに、面白かった。

 

そして、与えられた場で一生懸命頑張るっていう、シンプルなメッセージもいい。かつ、確かに、最近時代劇って観なくなったなぁ、、、って、思った。大河ドラマじゃなくて、いわゆるTVドラマ、水戸黄門とか、遠山の金さんとか、鬼平犯科帳暴れん坊将軍、、、どれも、結末がわかっているから安心してみることができたし、時間つぶしには最高。かつ、江戸の日本の文化も盛られている。着物の着方とか、、、、。

なんか、べたな時代劇がみたくなっちゃったなぁ、って感じ。
黒沢映画みたいなすごいのじゃなくて、、、。

 

また、映画好きな監督がつくったんだなぁ、という、他の映画のオマージュっぽいのも楽しい。小津安二郎っぽく、、っていう想像のシーンでは、侍のちゃんばらシーンに小津安二郎はあわない、、、って。最後は二人は同じ方向向いて、ならんで一緒のお茶をすすっちゃうって、、、あぁ、、わかる!そうかも!って、笑える。小津安二郎の世界も好きだけどなぁ。

 

観る人によって、ハマるツボは違うかもしれないけれど、自主製作でここまで作った、ということだけでなく、時代劇の魅力を再発見するような、そんな面白みがある。あとは、「つくる」という楽しさかなぁ。

作成していて、楽しかっただろうな、っていうよい空気感が伝わってくる。関係者の皆さん、お疲れさまでした!

 

善き時間をくださり、かたじけのうございます!