『武士の時代はどのようにして終わったのか 歴史総合パートナーズ ⑭』  by 池田勇太

武士の時代はどのようにして終わったのか
歴史総合パートナーズ ⑭
池田勇太
清水書院
2021年8月12日 初版 第1刷発行

 

歴史総合パートナーズ、『帝国主義を歴史する』と一緒に、こちらも借りて読んでみた。

megureca.hatenablog.com

 

著者の池田さんは 1978年生まれ。 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。 山口大学人文学部 准教授。専攻は日本近代史。

なかなか、タイトルがそそられる。そりゃ、大政奉還で終わったわけでしょ?と思うけれど、その後の戊辰戦争があったり、『夜明け前』の混乱があったりしたわけだ。どのように終わった?ときかれれば、混乱のなかで終わっていって、、、ということだろう。

 

清水書院HPの本の紹介には、
”19世紀後半に日本で起こった明治維新では、武士の支配する時代に幕が下ろされました。全国で藩がなくなり、城は破壊され、武士の身分的特権も奪われました。どのようにしてこのような大きな変革が起こったのでしょうか。身近な地域における変化にも目を向けながら、社会が急激に変化していくとはどのような経験なのか、追体験してみましょう。”とある。

 

目次
はじめに:政治や社会が一変するとき
1. なぜ大名は領主をやめたのか
(1)版籍奉還はどうして可能だったのか
(2)藩と県は何が違うのか
(3)版籍奉還によって何が変わったのか

2. 武家の階級はどのようにして崩れたか
(1)武家を支えていた秩序はどのようなものか
(2)士族・卒という新しい身分
(3)階級秩序はどのように崩れていったか

3. 武家の支配はどのようにして終わったか
(1)東北諸藩と旧幕臣たちの苦難
(2)藩はどこへ向かおうとしていたのか
(3)廃藩置県はどのようにして起こったか
(4)藩の廃止はどう受け止められたか

4. なぜ士族の特権は奪われたのか
(1)文明開化のなかで
(2)秩禄処分
(3)城下町の変貌と士族

おわりに:必然ではない歴史を生きるには

 

感想。
これは、面白い。確かになぁ、いきなり仕事も失い、収入も激減、、、そりゃ、氏族の反乱もおこるよなぁ、と思う。

本書は、生活者としての武士たちが時代の変化に翻弄されたようすが伝わってくる。封建制度に安住していた人たちが、いきなり土地もなくなって、仕事も無くなって、、、よくぞ、明治維新ってやったよな、と思う。それは、すごいというのと、乱暴だというのと・・・。

 

歴史の流れをちょっとお浚い。

1867年 大政奉還、 王政復興
1868年(慶応4年、明治元年) 戊辰戦争
1869年 版籍奉還
1871年 廃藩置県
1873年 徴兵令
1876年 秩禄処分廃刀令
1877年 西南戦争

 

版籍奉還とは、 諸大名が自らの領地(版図)と そこに住む人民(戸籍)を 天皇に返し 天皇が大名から 領主としての性格を奪った改革。

 

当時、大名たちは、領主を辞めなくてはならないような危うい状況にあったわけではなかった。にもかかわらず木戸孝允らは、西洋列強と肩をならべるためには、土地が小さく分割されている諸藩による支配をやめなくてはならないと考え、変革が進められた。つまり、  多くの武士は、そんな風に変わりたいと思っていたわけではないのに、武士の時代はおわってしまった、、、ということ。

 

土地も仕事もなくなって、その上、秩禄までなくなって、知らない間に自分の持っていたものがなくなっている、、という感じだろうか。かつ、身分までなくなって。

 

華族をつくったところで、それも時代とともに特権は失われていく。結局のところ、土地や仕事よりなにより、身分制度が崩れたということが一番大きいのだろう。身分に寄らず、だれもが生計を立てていかなくてはいけなくなった。人民の政治への参加も、身分によらないことが求められた。高知藩から始まった、板垣退助らの自由民権運動が、その一つ。

みんな、歴史に翻弄されたんだなぁ。。。『夜明け前』を武士の時代の終わり方の小説として読むと、より分かりやすい気がする。

megureca.hatenablog.com

そう考えると、『夜明け前』が読み継がれる理由がわかる。半蔵は、武士ではないけれど人々が翻弄される様子がしみじみと伝わってくる。

 

これまで悠然と生きてきた人たちの既得権益が失われ、困窮していく。よくぞ、明治維新ってすすんだな、と思う。そういう政策の転換に抵抗した士族の反乱も、結局は負けて賊軍。本書の中では、みんな薄々は世の中はかわっていかなくてはいけないことを自覚していたから、それ以上の混乱にはならなかったのだろう、と説明されている。人々の目が海外に開かれつつあった、ということだろうか。

 

政策が変わって、自分の身に降りかかってくるのは今の時代も同じだ。ただ、今は既得権益を奪うような急転換は、難しいだろう。全員参加の民主主義というのは、急激な変化を嫌う、というか難しい。急激な変化は、外部環境の変化でしかおこらない。自然災害、コロナ、、、、、。まぁ、そう考えると、明治維新も「開国」という大事件!のなせる業だったのかもしれない。

 

おわりに、では、

”幕末に生きていた人々は、数年後に武士が支配する世界が一変するとは、想像していなかったことでしょう。同様に、私たちにも今後、おもってもみなかったような変化が訪れるかもしれません。それによって私たちはよりよい社会を作り出せるかもしれませんが、他方でその弊害を被る人々も、必ず出ることでしょう。下手をすれば悲惨な戦争を呼び込むかもしれません。もちろん、変化を恐ろしいと思うのは自然なことですし、自分が被害を蒙る側に回りたくないと思うのは誰も同じです。けれども、望むと望まざるとにかかわらず、変化に直面する日がくるのだとしたら、そのとき、過去に生きた人々の経験は、私たちを勇気づけ、より注意深く周到な思慮をもって現実に対処することを可能にしてくれるはずです。”

と。

 

なるほど。こうして、歴史を学ぶことの意義を伝えるのが、このシリーズなのかな。教材めいた側面は強いけど、たしかに、学びのある一冊だった。

 

高校生が学んでいること、50代でもちゃんと理解していないことがたくさんある。歴史は新しい教科書で学び直すって、必要なんだろうなと思う。学生時代に学んだことだけを信じていると、時代についていけなくなるってこと。まぁ、そもそも、学生時代にそんなに真剣に学んでいなかったかもしれない・・・・けど・・・。

 

学ぶことは、楽しい。

そう、実は、社会人になってからの方が、学ぶことの「意味」が理解できてきて、学びが楽しくなるのではないだろうか、と思う。

 

だから、大人の読書も、楽しい。