マンガ日本の歴史 現代篇5 日中戦争・太平洋戦争
石ノ森章太郎
中央公論社
1994年4月5日 初版印刷
1994年4月20日 初版発行
現代篇4 政党政治の没落 の続き。
次から次へと内閣が総辞職しては新しい内閣となり、政治はなかなか落ち着かない。そして、政党政治が理想のようには成立せず、徐々に独裁的な空気が・・・。5巻では、とうとう日中戦争から太平洋戦争。そして、敗戦まで。
目次
序章 〈大東亜共栄圏〉の建設
第一章 日中全面戦争へ
第二章 統制の時代
第三章 太平洋戦争
5巻は、1937年(昭和12)7月7日の盧溝橋事件から日中戦争、太平洋戦争へつき進み、アメリカとの戦争、原爆、1945年(昭和20年)ポツダム宣言受諾まで。
正直、読んでいて辛くなる。日中全面戦争になってから、どんどん物資が不足して貧しくなる日本。あらゆるものの「統制」の時代。マンガの中では、「髪型すら好きにさせてもらえないのか」と、帽子をとった「波平さん」のような髪1本のおじさんのつぶやき・・・。人々は、徴兵されてゆき、見送る人びと。「戦争に行って帰ってきた奴なんていないもんな・・・」とつぶやく街の人びと。
昭和15年の第二次近衛内閣以降、戦争に突き進んでいった日本。アメリカからの石油輸出制限、航空用ガソリン禁輸。。。 米国国務長官 コーデル・ハルとの交渉へも意固地になるばかりの近衛内閣は総辞職。第三次近衛内閣で対米交渉推進派の海軍大将 豊田貞次郎が交渉を引き継ぐものの、内閣はゆずらない。アメリカは日本の資産凍結。勝ち目なんかあるわけないのに、南部仏印へ進駐していく日本軍。東条英機内閣。ただただ、戦争の道を進む。
昭和17年、ミッドウェー海戦の大敗以降は、大陸でも連敗、連敗なのに、隠し続けた報道。なんで、こんなに生活は厳しくなるんだ?と頭の中にハテナが飛んでいるのに、愚痴をいえば秘密警察が飛んでくるかもしれない現実のディストピア。
なんで、こうなったのか、、、、、。本当のところはどうだったのか・・・。本書の発行からすでに30年。歴史研究はあらたな事実も出てきているし、解釈はいろいろ変わってきているかもしれない。でも、史実は、、、、、おきたことは事実なのだ。
時系列だけ、覚書。
・1936年 ベルリン・オリンピック::前畑がんばれ!
・1937年4月:日本の国産軍用機「神風」が、立川空港からロンドンまで、最短時間記録を達成。
戦争の空気と国産の飛行機の成功を祈って明治神宮に人々が集まった話は、『明治神宮 内と外から見た百年』でも紹介されていた。
・1937年 (昭和12) 7月7日 盧溝橋事件
北京郊外で演習中のシナ派遣軍の一部に銃弾が打ち込まれたことをきっかけに、戦闘へ。宣戦布告のないまま、全面戦争へ。ドイツによる和平工作仲介があったが、近衛は蒋介石との交渉は無用、「国民政府を対手とせず」と声明を発表。
・1937年(昭和12年) 国家総動員法
近衛内閣の 財政経済 3原則( 生産力の拡充、 物資受給の調整、 国際収支の適合)により、軍事費捻出のため、経済だけでなく、言論統制も厳しくなる。
・1938年(昭和13)半ば
宇垣一茂外相は、近衛の「対手とせず」を否定して、 和平の道を取ろうとするが色々と邪魔されて失敗。
・1940年(昭和15)荻窪会談
近衛内閣は、 強硬論者の松岡洋介を外相に予定し、 陸相に予定した東城秀樹、外相に予定した吉田善吾とともに、 荻窪の近衛私邸で会談し、 外交的には 枢軸側と提携を強化し 「世界秩序」を目指し、 内省的には「新体制の建設」を実現するという基本方針を確認。
「大政翼賛会」により、国民はさまざまな機能、地域、年齢、性別などで組織化されることが構想された。統制の強化が進む。
・1940年(昭和15)末、アメリカから日米対戦回避の民間外交(宗教人)が来日。昭和16年頃から政府レベルの交渉となる。が、日本の南進気構えに対し、 英米蘭中諸国の共同の戦略体制が強化され、事態は一層の険悪となる。
・1941年(昭和16)、第三次近衛内閣。7月、陸軍は南部仏印(フランス領インドシナ=現ベトナム)へ進駐。これに対して、アメリカは、 在米日本資産凍結、 石油輸出禁止を実行。 石油 アメリカに依存していた日本は、岐路にたたされる。近衛は、 ルーズベルト大統領との会談でこの危機を回避しようとしたが、 日本陸軍を信用しない 米国側は応じなかった。
9月、御前会議。外交を主とするようにとの天皇の希望にもかかわらず、「開戦ヲ決意ス」との決定。なおも、交渉を継続しようとする近衛と、開戦決行を要求する東条英機陸相が衝突。近衛内閣総辞職。
11月、 アメリカでの交渉にあたっていた 野村吉三郎 駐米大使は最後の努力をするも、 ハル 米国務長官は、「4原則」= 満州事変以前の状態に戻るを提案し、譲らなかった。
・1941年(昭和16)12月7日、 ハワイ時間7時45分、日本海軍部隊はハワイ 真珠湾 米国艦隊を攻撃。陸軍はマレー半島に上陸開始。
世界大戦に発展。
・1942年(昭和17) ミッドウェー海戦にて、日本軍大敗。
・1944年(昭和19) サイパン島が占領されたのをきっかけに、東条内閣は退陣。 小磯国昭内閣が成立。米国軍による本土空襲で大損害。 鈴木貫太郎内閣へ。
・1945年(昭和20) アメリカ軍沖縄上陸。
・イタリア降伏(昭和18年)、ドイツ崩壊(昭和20年)。日本は全世界を敵として戦うことになる。
・1945年(昭和20)2月、 ルーズヴェルと、 チャーチル、 スターリンのヤルタ会議で、ソ連の対日参戦が決定。7月に ポツダム宣言を発して日本に降伏を呼びかける。
・1945年(昭和20) 日本がポツダム宣言への対応を悩んでいる間に、8月6日 広島、8月9日 長崎に原子爆弾が落とされる。
日本が講和の仲を依頼していたソ連は、中立条約の有効期限内であるにもかかわらず 9 日 宣戦を布告し、満州などに侵入した。
日本が仲介を頼りにしていたソ連が、アメリカに誘われて日本の敵となった話は、『日ソ戦争』に詳しい。
・8月14日、指導者たちの意見がまとまらない中、天皇の「聖断」で ポツダム宣言受諾を決定。 史上初めて降伏という事態を迎えた。
そうです。日本は、戦争に負けたんです。
戦争は、勝つ国があれば、負ける国がある。
そこに、正義はないと思う。
よく言われる不正行為、犯罪のトライアングル
①「機会」:それを犯せるチャンスがある
②「動機 (プレッシャー/インセンティブ)」:そうしたくなる理由がある
③「正当化」:やむを得ないことであると自己正当化する理屈がある。
戦争も、同じではないのか。
①軍事力があり、②自国が不利を被っているのだから、③国益を守るためやむを得ない。
って、3つがそろっているのではないのか?
ロシアの一方的理屈。
アメリカの関税による貿易戦争はどうか?①は疑問が残る。今のアメリカに経済力は本当にあるのか?アメリカの負け戦になるような気がする。。。
まぁ、政治と経済の未来は、読めない。
敗戦後の日本をどう描いているのか、次巻も気になる。。。