「赤毛のアン」で英語づけ
茂木健一郎
2014年8月5日 第1刷発行
株式会社夜間飛行
図書館の語学に関する棚で見つけた一冊。ちょうど、先日読んだ茂木さんの本『脳を鍛える読書の仕方』に赤毛のアンの話が出てきたので、タイミングがバッチリ合った。偶然の一致なんだけど。
「赤毛のアン」は、ルーシー・モンゴメリーの作品。私も、小学生の時に読んで、中学か高校くらいで、また読んで、結構好きな本だった。茂木さんほど入れ込んではいなかったけど。
話の舞台は、カナダの東海岸にあるプリンス・エドワード島。茂木さんが『赤毛のアン』のファンになりすぎて二回も行ったという。
この島にあるアヴォンリーという村に、マシュー・カスバートとマリラ・カスバートという独身の兄妹が暮らしている。彼らはグリーン・ゲーブルズ(緑の切妻屋根)と呼ばれる自分たちの家に孤児院から畑仕事を手伝ってくれる男の子引き取ることにする。ところが、手違いでやってきたのが、アンだった。そして、アンをめぐる物語だ。
そうそう、アンが引き取られた家の二人は夫婦ではないのだ。兄と妹。なので、子供はいない。子供の時に読んだ時は、夫婦だと思っていた。勝手に。人の記憶なんていいかげんなもんだ。
で、本書は、『赤毛のアン』のストーリーを解説しつつ、原文を少しずつ切り出して、茂木さんが英語原文で読むことの楽しさに嵌った理由をすこしずつ、つづっている。
英語の勉強の本としても読めるし、『赤毛のアン』のストーリを把握することもできる。
茂木さんが強調しているのは、『赤毛のアン』に出てくる単語は決して難しいものではなく、その単語の使い方がおもしろい、という点。
いくつか、覚書。
●アンが、マシューにつれられて初めてグリーン・ゲーブルズに向かっている途中、街道の美しさに感動して言うセリプ。
”It's the first thing I ever saw that couldn't be improved upon by imagination.”
→ 想像力を使ってもそれ以上よくできないものなんて、初めて出会ったわ。
文の骨子は、主語は、It。動詞は、is。
It is the 〇〇. という極めて単純な構文で、でてくる単語の一つ一つも、確かにそんなに難し言葉ではない。
それは、〇〇です。
それは、the first thing です。
それは、はじめてのことです。
それに、 I ever saw that couldn't be improved upon by imagination という修飾が付いてる。
things I ever saw.
私が初めて見たもの。
that couldn't be improved upon by imagination
想像によって良くすることが出来ないもの
アンは、こうして自分の気持ちを表している。
●そして、手違いで女の子がきてしまったけれど、マシューとマリラがアンを受け入れようと決断するくだり。
マリラは、マシューに「あの子が私たちにとって、何の役に立つの?」と言う。それに対して、マシューがマリラに言った言葉が素敵だ。
”We might be some good to her," said Mattew suddenly and unexpectedly.
→「私たちがあの子の役に立つかもしれないじゃないか」マシューは、突然、まったく予期せぬことを言った。
might be some good
何かの役に立つかもしれない、、、
なんて、シンプルで、深いセリフ。
●マリラに連れられて、初めて、近所のリンド夫人の家にいったアン。リンド夫人は、アンをみて、「赤毛で、そばかすだらけで、可愛くない」という。それに対して、アンは、怒りを爆発させる。
”How dare you say such things about me?” she repeated vehemently.
→「よくも、私に対してそんなこと言ったわね!」アンは怒気を帯びて繰り返した。
そんなアンの行動を、自宅に戻ってからたしなめるマリラ。でも、アンに、「想像してみて。誰かが面と向かって、あなたが痩せていて醜いと言ったらどう感じるか」と言わる。
そして、
An old remembrance suddenly rose up before Marilla.
マリラの胸に、古い記憶が突然よみがえってきた。
と、英語の解説がありつつ、話が進む。
あっという間に読んでしまった。小説として読んでいるわけではないのに、何度、涙したことか。。。アンのまっすぐな心。シャイだけどやさしいマシュー。そっけないけど、心優しいマリラ。
既に、何度も読んだことのある本だけど、ここ20年以上は、読んでないような気がする。もう一度、読みたくなった。
茂木さんの解説で進むアンのストーリーは、本当に色々あって、素敵だ。最初の方は、アンのあまりに想像力・表現力豊かで、まっすぐすぎるほどにまっすぐな性格に、こんな困ったちゃんいたら面倒だなって思うようなところもなくもないのだが、友人のダイアナとの友情のくだり、いじめっ子だったギルバードとの5年越しの仲直りのくだり、胸が熱くなるシーンがたくさんある。
名作と言われるものは、何度読んでも感動があるのだなぁ、と思う。
ストーリーを知っているのに感動するって、なんなんだろうか?
ちなみに、赤毛のアンの原書は、著作権保護が既に切れていて、全文を電子ブックで読むこともできる。
Project Gutenberg って、知らなかった。freeで読める英語の本が60,000冊以上そろっている。
赤毛のアンもいいけど、英語の勉強のtipsにもなった。
英語の勉強は、やろうと思えば無料でアクセスできる教材は山ほどある。
やるかどうか、ってことなんだよね。
ビジネス英語もいいけど、こういう小説の英語もいい。
佐藤優さんは、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)のKwaidan『怪談』を教材に薦めていた。
もっとも、佐藤さんは、本当に勉強するなら、有料のコンテンツを使う方がいい、と言っているけれど。
『赤毛のアン』の方が、話としてはワクワクしそうだ。
英語の勉強は、なにより、毎日コツコツが大事だと思う。
スピーキングも、数日さぼると口が回らなくなる。日本語と英語は使う筋肉が違うと思う。
アンは、学校で一番の成績になるほど勉強した。
そんなアンの姿にも刺激を受ける一冊だった。
赤毛のアン、原文でよんでみようかな、と思う。
英語の勉強も、たのしくなくちゃね。