『ジャパンアズナンバーワン それから どうなった』  by エズラ・F・ヴォ―ゲル

ジャパンアズナンバーワン それから どうなった
エズラ・F・ヴォ―ゲル
福島範昌 訳
たちばな出版
平成12年5月10日 初版第1刷 
Japan as No.1?(2000)

 

シリーズ、最終。

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1979年に日本ベタホメだった『Japan as No.1』に、とうとう『?』がついた一冊。

でも、 最初から彼は、Japan is No.1 とは言っていない。「as」なのだ。そして、すでにそれは、、、、ある側面では「was」になっているけれど、、、。

 

本書は バブル崩壊からすでに約10年しての出版。どう見ても日本の成功は過去の栄光となっていた時期。それでも、、、表紙をめくると、本文からの抜粋が。。。

”外国人の多くは、日本人が 今でも非常に活気があってダイナミック であることを理解していない。 さらに、 国の経済を一流に押し上げる原動力となった 美徳や才能がまだ日本に残されていることや、日本が グローバル市場に適した経済を確実に再構築するであろうことも理解できていないようである。  「本文」より”
と。


たしかに、、、と思う。私も、日本悲観派ではない。失われた30年とはいうけれど、、、何が?!と思っている派だ。たしかに失ってしまったこともあるけれど、、、捨てないと新しいものは作れないときがある。だって、みんなちゃんと歳をっているでしょう。この30年、日本国内であらたな戦争で失われた命はない。災害で失われた命は、あるけれど・・・。

 

著者のヴォ―ゲルさんは、2020年に90歳で亡くなっている。最後まで日本の可能性を信じてくれた人、そして、日本人に勇気を与えてくれた人、という気がする。

 

目次
コスモポリタン 愛国者」の苦言
プロローグ
PART1 『 ジャパンアズナンバーワン』 が生まれたきっかけ
PART2 『 ジャパンアズナンバーワン』のアイデア
PART3  タイミングと戦略
PART4  アメリカが学んだこと
PART5  不況から抜け出すために
PART6  構造改革
PART7 日米パートナーシップ
PART8  国際問題に対する積極的なスタンス
PART9  トライアングル・ パートナーシップ
PART10 ワシントン勤務

 

感想。
これは、回想記だなぁ。。。。なんだか、エッセイみたいな感じで読みやすい。軽い。
やはり、今『ジャパンアズナンバーワン』を読むならば、本書を含めたシリーズ3冊を読むべきだろう。ひょっとすると、この3冊目から古いほうへさかのぼって読んでもいいかもしれない。

 

最初の”「 コスモポリタン 愛国者」の苦言”を執筆しているのは、松山幸雄さん( 共立女子大学 教(元 朝日新聞 論説主幹)、とある。そこで、松山氏は、

”あの本を仔細に読み返してみると どこにも「 ジャパン イズ ナンバー1」とは書いておらず、むしろ 日本が傲慢になる危険のあることが指摘されている。しかし 目次には「日本の奇跡」「日本の成功」「大企業ー 社員の一体感と業績」「 教育ー 質の高さと機会均等」といった 日本人の自尊心をくすぐる言葉が並んでいて、 敗戦以来劣等感に悩まされ続けた日本人が、 当時かなり自分に都合の良い読み方をしていたのも無理からぬものがあったという気がする。”

と述べている。たしかになぁ、、、と思う。そして、ヴォ―ゲル氏と本書のことを、

”そして何よりも感銘を受けるのは彼が「コスモポリタン 愛国者」である点だ。 祖国の悪口ばかり言う 国際派を私は信用しない。 同時に、 祖国を客観的に見ることのできない 辺境な 愛国者もまた困った存在だと思う。この本が日本に、1人でも多くの視野の広い「コスモポリタン 愛国者」を生むのに役立ってほしいと心から願っている。”

と書いて結んでいる。

たしかに、、、。

 

レビューすることの大切さを感じる一冊。本書を『ジャパンアズナンバーワン』より先に読むと、より、彼がなぜ『ジャパンアズナンバーワン』を書いたかという背景、想いがわかるので、深く読めるかもしれない。

事実、やはり、彼は日本に感銘を受けたのだ。それは、まぎれもない事実なのだ。だから、素直によいものはよいと、問題のある点は問題である、と書いてくれている。当時の多くの財界人、政治家と交流し、一般の日本人とも交流し、日本人にはできない客観性をもって日本を見聞きして、それを文字にのこしてくれたというのは、日本人にとってもありがたいことだと感じる。やはり、「本を残す」って、後世への素晴らしい贈り物だ。

 

1979年から2000年の間に、日本もアメリカも、それぞれに経済の大波小波を経験した。アメリカではレーガン大統領がアメリカ予算削減策としてプラザ合意、ドルの切り下げにむかった。それは、日本にとっては円の切り上げで輸出困難となったけれど、バブルも発生させた。日本は、海外でお金を使いまくった。。。そして、日本の財政支出も増え続け、1997年には消費税が3→5%に引き上げられた。。。

 

そんな経済の歴史の勉強にもなった。『アメリカのアジア戦略』をよんだあとなので、私の中でいくつかの点と点がつながった。

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本書の中で、日本の課題は、

現存する 創造力をいかに活用するか

と述べられているのだが、その状況は今でも変わっていないように思う。日本は二番煎じの人まねが上手といわれるけれど、創造性だってないわけではない。みんなそれぞれに創造性をもってうまれてきている。それを活かすことができなければ、、その才能は発揮されない。その才能を活かす場をつくるというのが、年配者の責務ではないだろうか、、、と感じる今日この頃。

 

現場改善なんて、「KAIZEN」という言葉が世界共通語になっているくらい、日本人は創意工夫が得意だ。問題解決能力は高い。一方で、「問題発掘能力」が課題だといわれることがあるけれど、それも、発掘したものを「表に出す機会」、アウトプットする機会がないだけなのかもしれない。。。めったに発言しない日本人。。。

 

また、アメリカが失敗したことで、そのまま日本も失敗したこととして、

財務指標ばかりにたよった”とある。

 

うん、悲しいかな、事実だ。ほんと、事実だ。人は、、組織の中で偉くなるにつれて「財務指標」にしばられる。松下幸之助がすごかったのは、「財務指標」ばかりに走らなかったことだと思う。財務指標は、、、、結果でしかない。一方で、先立つものが無ければ、、、というのも当然ではあるのだが、「財務指標」にたよりすぎることによって、企業や組織の持つ本来の「価値・value」を見失ってしまい、行き先を、、、あるいは行程を、、、間違えてしまった組織もあったのではないだろうか・・・。

 

ちなみに、著者は、松下幸之助とも面識があって、松下政経塾で数多くの講義を行ったこともがある。

 

教育に関しては、厳しい指摘がある。

東大の教育の質が低い”、と。

『なぜ 東大は男だらけなのか』の世界が、見透かされている・・・。

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幼いころから長時間学習をして、子どもは豊かに育つのか?!

 

うん、今読んでも色々と示唆に富む本だと思う。今一度、日本人として読み直してみる価値があると思う。

 

気になったところをちょっとだけ覚書。

・日本の経済成長
 1945~55年:アメリカの支援援助を受けて第二次世界大戦後の廃墟から着実に復興を遂げた。工業生産は増加。市場には新しい消費者グッズが間断なく現れた。
 1955~73年: 実質経済は 8倍に成長。
 1960年代後半: 日本の GNP は工業諸国の中で第2位になった。
 1973年:オイルショック。70年代中期に急成長はストップ。
 1974年: 50年代以来初めて GNP が下がった。
 1978~90年:自動車と電子製品分野において 競争力を高め 支配的な供給者となった。

 

・「ナンバーワン」という言葉は、「 直面する変化や挑戦に対して、日本は工業国の中で最も上手く 適応した」という意味でつかった。

 

・”『 ジャパンアズナンバーワン』 の日本語版の序文の中で、 日本が傲慢にならないようにという警告をした。 そのことを覚えていた 多くの日本人が、後になって、 日本の問題の中心に傲慢さがあったと思うか と尋ねてきた。 その序文 で 私は、 悲劇的な欠点と高すぎるプライドを持った偉大な英雄が、 悲劇的な敗北を期することを説明するのに、 ヒューブリス(傲慢)と ネメシス(因果応報の女神) という、 ギリシャの言葉を使った。過剰とも取れる自信によって、 日本人は これらの問題に対処するための重要な第一歩に目を向けることを阻まれたのだと私は強く信じている。”

 

・” 日本は開かれた民主主義社会である。高い 識字率表現の自由、多党制度、普通選挙権と、 開かれた 選挙制度もある。 高度に発達した自由市場 工業経済もある。 戦後史の中で 最長で最悪の不景気に見舞われているにもかかわらず、 日本は外国人に畏怖の念を起こさせるほどの工業力を持った世界 第2の経済国の地位を保持しているのだ。”

 

過去の栄光かな、、と思うけれど、2024年のデータでも、名目GDPは、アメリカ(28.8兆ドル)、中国(18.5兆ドル)、ドイツ(4.6兆ドル)に続いて4位。ドイツと日本(4.1兆ドル)はどっちもどっち、、だけれど。 

 

日本には、まだまだ可能性がある。私は、そう信じている。

こつこつと、、、自分のできることをやっていこうと思う。

 

3冊を読んでみて、私たちはもっと日本に自信をもっていいのではないか、という気がした。とかく、過去の誤った判断を責めがちだけれど、その時には誤ろうとおもって下した判断ではないし、良かれとおもった、はず。間違ったとわかったなら、やっぱり、スクラップ&ビスド、更地にしてやり直す、それが必要な時がある。それは、勇気も必要だし、なにより強い決意が必要だ。

 

国としてのリーダーシップが、問われている。それは、日本もアメリカも、また諸外国も同じなんだろう。

迎える11月のアメリカ大統領選挙の盛り上がりに対して、日本の総裁選の地味なこと・・・・。どこかひとごと。いやいや、開かれた民主主義社会のはずだ。ちょっとくらい、自分事とおもって興味を持ってみよう・・・。

 

読書は思考を巡らせる旅だな・・・・。

だから、読書は楽しい。